マイナンバーとデジタル円──逃れられない“資産捕捉社会”へ

■ マイナンバー制度で、あなたの資産は“見える化”されている
すでに日本では、マイナンバー制度の下で銀行口座や証券口座との紐付けが義務化されつつあります。
現在は「努力義務」とされているものの、近い将来には完全義務化され、すべての金融資産が国に“見える化”される可能性が高いとされています。
この動きは一見すると税務の透明性向上や行政効率化のように見えますが、裏を返せば「個人資産の把握・監視体制の強化」でもあります。
■ 給付金も“現金”ではなく“マイナウォレット”で支給される時代
2023年以降、政府はデジタル通貨(CBDC)「デジタル円」の導入に向けた実証実験を進めてきました。注目されているのは、「マイナウォレット」と呼ばれる仕組みです。
これは、マイナンバーカードと一体化した“国家発行のウォレット”であり、将来的には給付金や公共サービスの支払いなどがこのウォレット経由で行われることが想定されています。
すでに一部自治体では、マイナンバーカードを活用したタッチ決済実証実験が行われており、国民一人ひとりに対してデジタルでお金を配布・管理できるインフラは整備されつつあるのです。
■ マイナカードで決済が完了する“国家主導型インフラ”
マイナンバーカードの機能拡張により、本人確認・口座連携・決済までもが一体化されつつあります。
2024年4月からは保険証との統合も進み、今後は交通系ICカード、健康管理、公共料金支払いなどの機能も順次統合されていく見込みです。
こうした国家主導型の決済インフラは利便性が高い一方で、「どこで何にお金を使ったか」が完全にトラッキングされる未来も意味します。
■ 財産税や預金封鎖が“数クリック”で実行可能な未来
ここまで見てきたように、すでに日本では国民の金融資産を正確に把握し、必要に応じて「給付」や「徴収」をデジタルで一括管理できる体制が急ピッチで整備されています。
つまり、かつてのような紙幣の切替や物理的な封鎖をせずとも、マイナウォレット経由で“制限付きのデジタル円”を配布し、同時に既存の口座や資産を凍結・課税する──そんな制度設計も現実的になっているのです。
技術的には、“数クリックで財産税や資産制限を実行できる時代”が、すぐそこまで来ているといえるでしょう。
憲法改正と緊急事態条項──国家権力の強化と国民資産への“視線”

■ 緊急事態条項が意味するものとは?
自民党が推進する憲法改正の核心のひとつが「緊急事態条項」の創設です。
これは、大災害・戦争・感染症・経済危機などの非常時において、内閣(政府)に強大な権限を集中させ、国会の関与なしに法律と同等の効力を持つ政令を出せるようにするという仕組みです。
つまり、民主主義的なプロセスを省略し、“国家命令”として政策を即時実行できる体制をつくることになります。
■ 国民の権利と財産は守られるのか?
憲法第29条には「私有財産は正当な補償の下に公共のために用いることができる」と明記されていますが、緊急事態条項が新設されると、その“正当な補償”の範囲や定義も、内閣の判断で変更されうる危険性があります。
実際、戦後の預金封鎖・財産税の例を見ても、国家が財政再建や戦費調達のために国民の資産に直接手を伸ばした歴史があります。
緊急事態条項が成立すれば、当時のような資産没収・強制課税が、法的手続きを経ずとも“国家命令”として可能になるというシナリオが現実味を帯びてきます。
■ 財産権への懸念──何が対象になるのか?
強制的に徴用・没収される対象には、以下のような資産が含まれる可能性があります。
- 預金口座(NISA・iDeCo含む)
- 株式・債券などの有価証券
- 不動産
- 貴金属や骨董品
- 取引所に預けられた仮想通貨資産(中央集権的に管理されているもの)
ただし、自己管理型のウォレット(ハードウェアウォレットやTangemウォレットなど)に保管された資産については、国家による即時的な把握や制御は技術的に困難とされています。
この点が、今後の資産防衛のカギになるかもしれません。
■ 憲法改正が進めば「没収のハードル」が一気に下がる
現在の憲法では、国民の財産権は比較的強く守られています。
しかし、憲法改正が実現し、緊急事態条項が発動されると、次のような展開が想定されます
- 財政危機や戦争を理由に、特例的な課税(財産税)が導入
- 預金・資産の凍結または制限付き利用
- 補償の範囲が曖昧なままの資産没収
つまり、「法的に整備された没収の仕組み」が構築されることになり、戦後と同様の“国家ぐるみの資産再配分”が再び行われる可能性が出てくるのです。
次回は、こうした憲法改正・緊急事態条項・デジタル円といった制度リスクに備えるために、個人が実践できる資産防衛策──とくにハードウェアウォレットやステーブルコインの活用について考察します。